ファクタリングというと、なんだか難しそうな言葉ですよね。

でも実は、私たちの事業活動において意外と身近な契約かもしれません。

特に急な資金が必要なとき、多くの事業者が検討する資金調達の方法です。

しかし、メリットがある一方で「高額な手数料を請求された」「返済義務があると言われた」など、トラブルに巻き込まれるケースも少なくありません。

今回は法律のお姉さんこと日向陽菜が、実際に起きたトラブル事例をもとに、ファクタリング契約の落とし穴と、あなたを守るための防衛策についてお伝えします!

資金調達は企業経営の重要な柱。

だからこそ、正しい知識を身につけて、後悔しない選択をしましょう。

ファクタリングって何?ざっくり仕組みをおさらい

まずは基本から!ファクタリングとは、簡単に言うと「売掛金を早く現金化する方法」です。

本来なら取引先からの入金を待たなければいけないところを、ファクタリング会社が先に買い取ってくれるんですね。

期日前に現金化できるので、急な資金需要に対応できる便利な仕組みです。

ファクタリングの基本構造

ファクタリングの流れはこんな感じ👇

1. あなた(債権者)が持っている売掛債権をファクタリング会社に売却

2. ファクタリング会社がその債権の金額から手数料を引いた金額をあなたに支払う

3. 支払期日が来たら、取引先(債務者)がファクタリング会社または利用者に売掛金を支払う

法的には「債権譲渡契約」に該当し、民法第466条に基づく合法的な取引です。

融資ではなく「売買」なので、原則として返済義務はないのが特徴です。

銀行融資やリース契約との違い

ファクタリングと他の資金調達方法の違いって何でしょう?

調達方法性質審査基準スピード返済義務
ファクタリング売掛債権の売買売掛先の信用力最短即日原則なし
銀行融資金銭消費貸借利用者の信用力数週間〜あり
リース契約物品の貸借利用者の信用力数日〜あり

銀行融資やリースと最も異なる点は、あなた自身ではなく「売掛先の信用力」が重視されることと「返済義務がない」ことです。

ただし、これが悪用されてトラブルになるケースもあります…(後で詳しく説明します)。

2社間・3社間ファクタリングの違いって?

ファクタリングには「2社間」と「3社間」の2つの形態があります。

両者の大きな違いは、「売掛先に知られるか知られないか」です。

2社間ファクタリングの特徴:

  • あなたとファクタリング会社の2社間で契約を結ぶ
  • 売掛先には知られずに利用できる(通知なし)
  • 売掛金はいったんあなたが受け取り、ファクタリング会社に支払う
  • 手数料は10%~30%程度と比較的高い
  • スピーディーに資金調達できる(最短即日)

3社間ファクタリングの特徴:

  • あなた、ファクタリング会社、売掛先の3社間で契約を結ぶ
  • 売掛先に債権譲渡を通知する必要がある
  • 売掛金は売掛先から直接ファクタリング会社に支払われる
  • 手数料は2%~9%程度と比較的低い
  • 契約までに時間がかかる(数日~数週間)

「取引先に知られたくない」「すぐに資金が必要」という場合は2社間、「手数料を抑えたい」「正式な手続きで安全に」という場合は3社間を選ぶとよいでしょう。

ただし、2社間ファクタリングは手数料が高く、悪質業者も多いので注意が必要です。

よくあるトラブル事例【リアルケース】

では、実際に起きているトラブル事例を見ていきましょう。

「まさか自分が…」と思っていても、資金繰りが厳しくなると冷静な判断ができなくなることもあります。

他社の失敗から学んで、賢く利用しましょう!

「手数料が高すぎた!」:契約条件の読み落とし

ある飲食店経営者Aさんの事例です。

「急な設備投資が必要になり、ファクタリングを利用しました。契約時は『手数料は20%程度』と説明されて契約しましたが、実際に入金されたのは売掛金の60%程度。手数料が想像以上に高く、資金繰りがさらに悪化してしまいました」

このケースでは、契約書に「基本手数料20%+各種事務手数料・審査料」などが小さく記載されていたようです。

契約書の細かい部分まで確認しないまま署名してしまったことが原因でした。

防止策:

  • 手数料の内訳と総額を必ず確認する
  • 複数社から見積もりを取って比較する
  • 「基本手数料」以外の費用がないか確認する

「債権譲渡禁止だったのに…」:契約違反の罠

建設業を営むBさんのケースです。

「取引先との契約書には『債権譲渡禁止特約』があることを忘れていて、2社間ファクタリングを利用しました。後日、取引先に債権譲渡が発覚し、取引停止になってしまいました」

2020年4月の民法改正により、債権譲渡禁止特約があっても債権譲渡自体は有効になりましたが、特約違反は契約違反となり、取引先との関係悪化を招くリスクがあります。

防止策:

  • 取引先との契約書に債権譲渡禁止特約がないか確認する
  • 特約がある場合は、取引先の承諾を得るか3社間ファクタリングを検討する
  • 契約違反にならない方法を専門家に相談する

「返済義務があるって聞いてない!」:実質借金化するケース

小売業を営むCさんの事例です。

「ファクタリングは返済義務がないと思っていましたが、契約書をよく読むと『売掛先が支払わない場合は利用者が支払う』という条項がありました。結局、取引先が倒産して、私が全額支払うことになりました」

これは「償還請求権」と呼ばれる条項が含まれていたケースです。

本来、ファクタリングは債権を「売却」するので、売掛先が支払わなくてもあなたに返済義務はありません。

しかし、悪質な業者は「償還請求権」を設定し、実質的な融資として機能させることがあります。

防止策:

  • 契約書に「償還請求権」の有無を確認する
  • 「ノンリコース」(返済義務なし)であることを確認する
  • 曖昧な表現がある場合は、書面で確認を取る

「SNSでファクタリング紹介されて…」:怪しい業者との接触例

卸売業のDさんのケースです。

「SNSの広告で『審査なし・即日入金』というファクタリング会社を見つけました。急いでいたので連絡したところ、審査資料もほとんど求められず契約。後から法外な手数料を請求され、しつこい取り立てに悩まされています」

「審査なし」「即日OK」などの甘い言葉には要注意です。

審査が甘いということは、その分リスクを手数料に上乗せしていたり、最初から返済させる気がなかったりするケースもあります。

防止策:

  • 極端に審査が甘い業者は避ける
  • 会社の実態(住所、設立年、実績など)を確認する
  • 金融庁の「ファクタリングに関する注意喚起」をチェックする

落とし穴はここ!契約時のチェックポイント

ファクタリング契約を結ぶ際、以下の重要項目は必ずチェックしましょう。

契約書は法的拘束力を持つ重要な書類。

「急いでいるから」と読まずに署名するのは非常に危険です!

これだけは押さえて:重要条項ベスト5

1. 手数料の総額と内訳

契約書に記載された手数料が、説明を受けた金額と一致しているか確認しましょう。

基本手数料以外に、事務手数料、審査料、振込手数料などが別途加算されていないか注意します。

手数料の相場は以下の通りです:

  • 2社間ファクタリング:10%~30%
  • 3社間ファクタリング:2%~9%

相場を大きく外れる場合は要注意です。

2. 償還請求権の有無

本来ファクタリングは「ノンリコース」(返済義務なし)ですが、契約書に「償還請求権」や「買戻し条項」が含まれていないか確認しましょう。

これらの条項があると、売掛先が支払わない場合にあなたが返済義務を負うことになります。

3. 債権譲渡通知の取り扱い

2社間ファクタリングの場合、売掛先に通知しないことが前提ですが、契約によっては「必要に応じて債権譲渡通知を行う場合がある」などの条項が含まれていることもあります。

これにより、取引先に知られるリスクが生じる可能性があります。

4. 違約金・遅延損害金

契約違反や支払遅延の場合の違約金や遅延損害金の金額・率を確認しましょう。

年利20%を超える設定は利息制限法の上限を超えている可能性があります。

5. 契約期間と解除条件

一度きりの取引のつもりが、自動更新条項により継続契約になっていないか確認しましょう。

また、契約解除の条件や手続きについても明確になっているか確認が必要です。

専門用語のカンタン解説集

ファクタリング契約書には専門用語がたくさん出てきます。

意味を理解せず署名すると後々トラブルの元に…。

重要な専門用語を解説します。

専門用語意味チェックポイント
債権譲渡売掛債権の所有権を移転すること譲渡の対象・範囲が明確か
対抗要件第三者に債権譲渡の事実を主張するための要件対抗要件の具備方法が合理的か
償還請求権売掛先が支払わない場合に利用者に支払いを求める権利原則「なし」が望ましい
債権譲渡登記法務局で債権譲渡の事実を登録すること費用負担が明確か
ノンリコース返済義務がないこと明記されているか
自動更新条項一定期間経過後に自動的に契約が更新される条項解除方法が明確か

契約書レビューのコツ(法律女子のひとことアドバイス付き)

「契約書って長くて読むのが大変…」

そう思いますよね。

でも、契約書をしっかり読まないと大変なことになるかも。

以下のポイントに注目して効率的にレビューしましょう。

1. 必ず契約書の控えをもらう

契約書の控えを渡さない業者は避けましょう。

後々トラブルになったときに証拠になります。

2. 印刷が小さな部分や脚注に注目

字が小さい部分には、不利な条件が書かれていることが多いです。

特に「※」マークや脚注部分は要チェック!

3. 曖昧な表現がある場合は質問する

「適宜」「必要に応じて」などの曖昧な表現がある場合は必ず質問し、回答を書面でもらいましょう。

4. 時間をかけて読む権利がある

急かされても、焦らず読む時間を確保しましょう。

「今日中に契約しないと手数料が上がる」などと言われても、冷静に判断することが大切です。

5. 不明点は専門家に相談

契約内容に不安がある場合は、弁護士や税理士などの専門家に相談しましょう。

少しのコストで大きなトラブルを防げます。

💁‍♀️ 法律女子のひとことアドバイス

「契約書の内容が口頭での説明と違う場合、絶対に『説明と違いますよね?』と指摘してください!

言われるがままに署名すると、後でトラブルになったとき『あなたが署名したんですよね?』と言われてしまいます。

不安な点は必ずメモやメールで記録を残しておくことをおすすめします♪」

トラブルに巻き込まれないための防衛策

ファクタリングを安全に利用するための防衛策をご紹介します。

事前の準備と知識があれば、多くのトラブルは避けられます!

事前にできる3つの自己防衛策

1. 複数社から見積もりを取る

1社だけでなく複数のファクタリング会社から見積もりを取り、手数料や条件を比較しましょう。

相場を知ることで、不当に高い手数料を請求する業者を見分けることができます。

【見積もり比較のポイント】

  • 手数料の総額(%と実額)
  • 諸経費の有無と金額
  • 入金までのスピード
  • 契約条件(償還請求権の有無など)

2. 企業情報を徹底調査

契約前に、ファクタリング会社の企業情報を徹底的に調査しましょう。

以下のような情報をチェックします:

  • 会社設立年(新しすぎる会社は要注意)
  • 本社住所(実態があるか)
  • 資本金
  • 代表者の経歴
  • 口コミ・評判
  • 金融庁の警告対象になっていないか

3. 業界団体への加盟を確認

信頼できるファクタリング会社は、以下のような業界団体に加盟していることが多いです:

  • 日本ファクタリング協会
  • ファクタリング事業推進協会

これらの団体に加盟している会社は、一定の基準を満たしていると考えられます。

団体のウェブサイトで加盟企業リストを確認しましょう。

専門家への相談タイミング

「自分だけで判断するのは不安…」

そんなときは、専門家に相談するのがベストです。

特に以下のタイミングでは、専門家への相談をおすすめします:

1. 高額な契約をする前

契約金額が大きい場合(例:500万円以上)は、契約書の内容を弁護士にチェックしてもらいましょう。

数万円の相談料で数百万円の損失を防げるかもしれません。

2. 契約内容に不安がある場合

契約書の内容に不明点や不安がある場合は、躊躇せずに専門家に相談しましょう。

特に「償還請求権」などの重要条項については、弁護士のアドバイスが有効です。

3. 資金繰り全体の見直し時

ファクタリングを検討している時点で、資金繰りに課題がある可能性があります。

税理士や中小企業診断士に相談し、ファクタリング以外の資金調達方法も含めて、経営全体の改善策を検討しましょう。

万が一トラブルになったら?対応ステップまとめ

トラブルの予防が一番ですが、万が一トラブルに巻き込まれた場合の対処法をご紹介します。

1. 証拠を収集する

契約書、メールのやり取り、振込記録など、すべての証拠を保存しておきましょう。

口頭でのやり取りは、内容とともに日時・場所・相手の名前をメモしておくことも大切です。

2. 法的な立場を確認する

ファクタリング契約が「債権譲渡契約」なのか「実質的な金銭消費貸借契約」なのかを確認します。

後者の場合、貸金業登録がない業者なら「違法な貸付」として対抗できる可能性があります。

3. 迅速に専門家に相談する

トラブルが発生したら、すぐに弁護士に相談しましょう。

早い段階での介入ほど、解決が容易になります。

ファクタリングに詳しい弁護士を探すには:

  • 弁護士ドットコム
  • 日本弁護士連合会のウェブサイト
  • ファクタリング事業推進協会の相談窓口

4. 公的機関への相談も検討する

悪質なケースでは、以下の機関への相談・通報も効果的です:

  • 金融庁金融サービス利用者相談室
  • 最寄りの財務局
  • 消費者ホットライン(188)
  • 警察(悪質な取り立てなど)

5. 交渉・和解を試みる

弁護士を通じて、ファクタリング会社との交渉・和解を試みることも一つの解決策です。

手数料の減額や支払い方法の変更など、双方が受け入れられる解決策を模索します。

まとめ

ファクタリングは、正しく利用すれば効果的な資金調達手段です。

しかし、契約内容をよく理解せずに利用すると、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。

今回ご紹介したポイントをおさえて、安全にファクタリングを活用しましょう。

ファクタリング契約の安全な利用のためのキーポイント:

1. 理解する

  • ファクタリングの仕組みと特徴を正しく理解する
  • 2社間・3社間の違いを把握する
  • 融資との違いを認識する

2. 事前に確認する

  • 複数社から見積もりを取る
  • 会社の実態と評判を調査する
  • 業界団体への加盟を確認する

3. 契約書をチェックする

  • 手数料の総額と内訳
  • 償還請求権の有無
  • 債権譲渡通知の取り扱い
  • 違約金・遅延損害金
  • 契約期間と解除条件

4. 必要に応じて専門家に相談する

  • 契約前の内容確認
  • 資金繰り全体の見直し
  • トラブル発生時の対応

ファクタリングを上手に活用して、ビジネスの成長につなげていきましょう!

知識を味方に、安心して仕事に集中できる環境をつくりましょう。


Q&A よくある疑問にお答えします

Q1: ファクタリングは借金になりますか?

A1: 本来のファクタリングは売掛債権の売買契約であり、借金ではありません。ただし、「償還請求権」がある契約の場合は実質的に借金と同様になる可能性があります。契約内容をよく確認しましょう。

Q2: 個人事業主でもファクタリングは利用できますか?

A2: はい、個人事業主でも利用可能です。ただし、事業性のある売掛債権が対象で、給与債権などの個人的な債権は対象外です。「給与ファクタリング」と称するサービスは違法なケースが多いので注意が必要です。

Q3: ファクタリング会社が倒産したらどうなりますか?

A3: 基本的には影響はありません。2社間ファクタリングの場合、すでに売掛金を受け取っているため問題ありません。3社間ファクタリングの場合は、売掛先に別の支払先を指定する必要が生じる可能性があります。

Q4: 手数料の相場はどれくらいですか?

A4: 2社間ファクタリングで10%~30%、3社間ファクタリングで2%~9%程度が相場です。ただし、売掛先の信用度や支払期日までの期間によって変動します。

Q5: ファクタリングは会計上どう処理すればよいですか?

A5: ファクタリングは「売掛金の譲渡」として処理します。売掛金を消し込み、手数料は支払手数料などとして計上します。具体的な処理方法は税理士に確認することをおすすめします。